ほどよい仕事 乙な開発 その3

完璧ではない でも気が利いてる

プロジェクトが佳境を迎えた頃、外部のステークホルダーは往々にして言うのです。
「もともと、どういう定義だったんだっけ?それは、守られているの?」と。
(【ほどよい仕事 乙な開発 その2】より)

そんな時、私たち(立場がユーザであれ、開発者であれ)が目指すのは、”乙”なシステムです。
予め定められた「完璧」ではないかもしれません。部外者から見たら奇妙な造りになっているのかもしれません。
でも大事なのは、それを使うユーザにとって、気が利いていることです。
そのシステムがユーザを快適にし、ユーザの仕事や生活を、よりよく変化させる道具になっていること。
もしシステムが、そんな ”乙” なものなら、それはきっと完璧であるよりも価値があるのではないでしょうか?

ほどよい仕事 乙な開発 その2

システム開発における完璧さの追求

日頃、システム開発に従事する私たちにとっても「よい仕事とは何か?」という問題は永遠の課題です。

伝統的には、「要件定義、設計に準じた品質」こそが「よいシステム」であると考えられてきました。今でもその価値観は、大多数のプロジェクトで共有されています。
明文化された「要件」や「設計」は多くの人が共有することができ、ユーザーも開発者も同じ完璧を目指すために明確でわかりやすい「定義」であることは間違いありません。

ところがこの「定義」は、しばしば私たちを悩ませます。
「3ヶ月前に決めた定義が、環境の変化によって変わってしまった」
「イレギュラーだが重大な機能を追加しなければならない。1ヶ月前には思い出せなかったが」
「接続先のシステムが変更になったが、その仕様は2ヶ月後にならないとわからない」
そんな環境の変化に対して、既に定められた「定義」をどこまで追い求めるのか、プロジェクトメンバー達は悩みながら定義をチューニングし、調整しながらゴールを目指します。

しかし、プロジェクトが佳境を迎えた頃、外部のステークホルダーは往々にして言うのです。
「もともと、どうゆう定義だったんだっけ?それはちゃんと守られているの?」と。
(プロジェクトがトラブルに見舞われ、スケジュールが延伸しているならなおさら)

ほどよい仕事 乙な開発 その1

乙なこと

日本には気の利いた、シャレたものという意味で「粋」とか「乙」という言葉があります。
ニュアンスが違うので2つの言葉は同じ意味では使われませんが、どちらも江戸時代から使われるようになった比較的新しい言葉のようです。
今日は、この新しい言葉から、当社の社名(略称)にも使われる「乙」という言葉について。

もともと「乙」という言葉は干支を数える言葉として『甲乙丙丁‥』のように使われ、順番を表した場合に「2番目」を意味するようになったそうです。
「甲乙つけがたい」という言葉のように、昔は「甲 1番目 優れたもの」「乙 2番目 劣る方」という位置づけでしたが、邦楽の分野ではオーソドックスな「甲音」に対して少し変わった音色(1オクターブ低い)ということで「乙」を「奇妙な、変わった」という意味で使うようになりました。
江戸時代には、「侘びさび」に代表されるような「欠けている妙=不完全なものにこそ価値がある」という世界観が流行しました。「乙」が 変わっているけど気が利いていて素敵なものという意味合いで使われるようになったのは、そうした世界観が背景にあるという説もあります。